【レポート】2026/07/11  第24回北海道病院学会 共催ランチョンセミナー 

2026.7.13

データが突きつける「北海道モデル」の分岐点 ~全国二次医療圏データから見える、機能分化と経営改善の勝機~

2026年7月11日(土)に開催された「第24回北海道病院学会」(会場:グランドメルキュール札幌大通公園)にて、弊社共催のランチョンセミナーを実施し、盛況のうちに終了いたしました。

今回の学会テーマは「持続可能な地域医療の再構築 -北海道モデルの未来図-」。本セミナーでは、弊社 札幌オフィス長の田野佑樹と、戦略コンサルティング部の中野敬太が登壇し、全国二次医療圏データの分析をもとに、北海道の医療提供体制が直面する構造的な課題と、その中に見出しうる「経営改善の勝機」について講演いたしました。

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■開催概要

開催日時:2026年7月11日(土) 

会場:グランドメルキュール札幌大通公園(札幌市中央区北1条西11丁目) 

主催:第24回北海道病院学会(一般社団法人北海道病院協会) 

共催:株式会社日本経営

演題:データが突きつける「北海道モデル」の分岐点
~全国二次医療圏データから見える、機能分化と経営改善の勝機~ 

演者:

座長:株式会社日本経営 札幌オフィス長 田野 佑樹

演者:株式会社日本経営 戦略コンサルティング部 中野 敬太 

      演者:中野 敬太           座長:田野 佑樹


■講演の概要

1. データから見える北海道の医療提供体制の特徴

国は急性期拠点機能について「人口20万~30万人に1つ程度」という水準を示していますが、広大な北海道においては、搬送距離等の物理的制約から、1医療機関でそれだけのエリアをカバーすることは現実的に困難です。だからこそ、在宅医療や軽症患者対応にとどまらず、脳卒中や心筋梗塞など急性期領域も含めた「遠隔医療」を本気で検討する必要性を提起しました。遠隔ICU支援などの診療報酬上の評価や、メーカーとの実証実験ベースで進めるDXの取り組み方、航空アクセスを活用した地域医療連携の先進事例なども交えてご紹介しました。

もう1つの特徴として挙げたのが、開設者別の病院数です。北海道は市町村立病院の数が全国最多である一方、急性期一般入院料1の基準となる「救急搬送2,000件・手術1,200件」の両方を満たす医療機関は限られており、急性期機能が分散している実態がデータから読み取れます。加えて、市町村間の調整の難しさ、基幹病院機能を担う都道府県立病院が存在しないという構造も、地域再編を進めにくくしている要因であることを解説しました。

2. 地域再編事例の振り返り ― データが示す「負のループ」と時間軸

続いて、道内で公表された病院再編・機能集約の事例について、人口動態、政策医療の指定状況、医師数・看護職員数のバランス、DPC症例数や疾患別シェア、救急搬送件数、決算・キャッシュポジション、診療単価といった公開データをもとに振り返りました。

急性期機能の分散により症例が集まらず、診療単価が上がりきらない。一方で、機能維持のための人員・投資は必要で、そこに賃上げ・物価高騰が重なり、収支バランスとキャッシュポジションが悪化していく――こうした「負のループ」に陥ると、構造的な見直しの成算が見えた頃には「もう間に合わない」という事態が起こりうる。再編・機能転換には時間がかかるからこそ、経営判断における「時間軸」の重要性を強調しました。

3. 逆境こそ商機に ― 民間病院が担いうる役割と戦略の転換

後半では、地方圏からの患者流入により札幌圏の基幹病院に外来・後方支援の負荷が集中しうるという見立てのもと、民間病院がその受け皿を担うことの可能性を提言しました。2026年度診療報酬改定で新設された紹介・逆紹介の推進に係る評価や、地域包括ケア病棟等を有する200床未満病院への加算など、地域密着型病院が基幹病院と連携するインセンティブが整いつつあることもご紹介しています。

 また、高齢者救急を受け入れるうえでは「入院中にADLを落とさず退院につなげること」「軽症のうちに対応すること」が求められ、職種間のチーム医療がより重要になることにも言及しました。

そのうえで、「一見不合理に見えても、全体のストーリーとして見れば合理的」という競争戦略の考え方や、「戦略の妥当性×実行の徹底」という強い病院経営の方程式、賃上げに見合う価値提供を現場に問いかける組織づくりについてお伝えし、データが示す厳しい現実を受け止めながらも、発想を明るく転換していくことがマネジメント層に求められる、と締めくくりました。

■座長からのメッセージ

最後に、本セミナーの座長を務めた田野 佑樹(株式会社日本経営)より、ご参加の皆さまへ以下のようなメッセージが送られ、会は締めくくられました。

データだけを掘り下げると、非常に暗い印象を受けます。ただ、これは過去の事実を振り返っているからこそ生まれる着眼であり、それ自体はとても大事なことです。一方で、客観的に公表されているデータについて、地域の中でみんなで話し合えていたかどうか。数年前から病床機能報告などのデータが蓄積されてきているにもかかわらず、そこが難しかった。だからこそ、データ分析だけに時間をかける時代はもう終わりだということを、今日改めて強く認識いただけたテーマだったのではないかと思います。

今回、救急の受け入れ件数・手術の実施件数によって、急性期のバーが明確に引かれました。「どこの病院がどうする」というミクロな話だけでなく、「この地域はどのような医療をしていくのか」「国から何が求められているのか」という発想で、地域医療構想調整会議を進めていく必要があります。2028年度に向けて、残り2年半。あっという間に過ぎてしまう中で、私たちはすでにそのスタートラインに立っています。

また、こうしたデータを職員の皆さまに共有される際には、数字だけが独り歩きしないよう、そこに意図やこれからの未来へのメッセージを乗せて伝えていただきたいと思います。事実は事実として受け止めながら、明るい未来をどう作っていくか。それこそが、これから私たちに求められていることです。ぜひ、明るい未来について雑談やディスカッションをするところから、月曜日をスタートしていただければと思います。

データだけを見れば厳しい未来が示される中でも、事実は事実として受け止めつつ、明るい未来をどう作っていくかを地域で話し合っていくこと。それが、学会テーマでもある「北海道モデル」構築のスタート地点になるのではないかと考えております。


弊社は今後も、データに基づく現状分析と実行支援を通じて、地域医療の再構築と病院経営の改善に貢献してまいります。

■日本経営が提供する全国330の医療圏を対象とした地域医療の分析資料「医療需給総覧」


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